格差社会を広げるべきであるか

 日本では、世間一般的に、格差を縮め、低所得者がなるべく生活をしやすい世の中にすべきであるという意見が大多数である。しかしながら、世界では、格差を広げるべきであるという意見が大多数である。後者の意見を一見、否定したくなってしまうが、それなりの根拠があっての主張ではある為、一回この意見を飲み込む必要性がある。では、後者はどのような根拠を基に主張をしているのだろうか。

 結論から述べると、世界では、VIP戦略という仕組みが人々の中に根付いている。VIP戦略とは、ビジネスでは、80:20の法則とも呼ばれている。つまり、2割の顧客から得た収益で、8割の顧客からの収益を補うといったものである。言い換えれば、2割の高所得者が、8割の低・中所得者を補う戦略である。では、この戦略がどのように格差社会と関係しているのだろうか。

 世界の富の話をすると、2023年のOxfamの報告によれば、世界の上位1%の富裕層が世界の富の約45.6%を所有しているとされている。これを別の解釈で考えれば、約45.6%の人々にとっての1万円は、約1%の富裕層の人々にとっては、計算の結果、約1円の価値に相当するということである。

 これを応用していくと、例えば、高級宿泊施設に純顧客数が100万人いた場合、2割の富裕層顧客にVIP待遇をし、そこで多額の収益を得る。そこで得た収益で高級宿泊施設全体の収益を確保してしまえば、残りの8割の顧客にお手頃価格で高級品質のサービスを赤字で提供することができ、顧客もお手頃価格で高級宿泊施設のサービスを得ることができるという戦略に応用することができるのである。つまり、収益を得る箇所と損失をを生む箇所をはっきりさせることで顧客満足度の高いサービスの提供を可能にしているのである。

 このようなビジネスは、ニッチ戦略であると思うかもしれないが、実は、身近に多く存在し、私たち低・中所得者は、この仕組みのおかげで日々、お手頃価格でサービスを利用することができている。具体的には、航空券やリゾートホテルの宿泊や寿司屋などが挙げられる。

 航空券は、グレード分けされていることで、一番下のクラスのエコノミークラスがお手頃価格で航空券を購入することができている。仮に、すべて座席のサービスと料金を平均化したものを提供した場合、一座席の単価が数倍にもなり、私たち低・中所得者は、航空券を買うことができず、航空会社にとっても、顧客が足りず、飛行機を飛ばせないのである。

 寿司屋も同じである。寿司屋は、寿司で収益を得ているのではなく、お酒で収益を得ているのである。これは、寿司屋ではなく酒屋ともいうべきである。私たちが、大トロをお手頃価格でいただける理由には、富裕層が日本酒を買ってくださるという仕組みがあるからである。

 このように、私たちの身近にはVIP戦略に基づくビジネスがありふれており、この仕組みを理解した上では、格差がもっと広がれば、私たちはもっと多くのサービスを利用することができ、幸せに暮らすことができるという幸福論の理解に繋がっていくのかもしれない。

 ラスベガスがVIP戦略都市として代表的であるが、世界では、多くの人々がこの仕組みについて理解をしており、これを根拠に、格差をもっと広げていくべきであるという意見が大多数を占めている。

 しかしながら、世界での少数派や日本を含め格差を広げるという問題には、やはり、抵抗がある問題であり、現状、知る人知る、VIP戦略なのかもしれない。

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